2016年6月22日水曜日

尚古堂・紫泥雲足長方

つい先日縁あって,ある愛好家さんから尚古堂を譲っていただきました
形状などの名称は正式には紫泥外縁隅入り雲足長方(落款・尚古堂製)

あらかじめ画像をいただいていたので保存状態のよさなどはわかっていましたが
実物に触れてみると仕上がりや時代感が抜群なので感激もひとしおです

寸法は間口12.5×奥行き9.0×高さ4.2㎝で
大中小とあるこの外縁雲足の形では中の大きさに入ります



なんて言ったって尚古堂です
一目で並みの支那鉢との格の違いが伝わってきますね

底光りする土目の重厚感、シンプルなフォルムと適度な緊張感
まさに戦前の支那鉢の代表的な作品です

シンプルかつ力強いシャープな線は
やはり一発仕上げの支那鉢ならではのものがあります



盆栽鉢の凄さは、制作より一世紀もの年月の実用に耐えながら
なお現役であり続けて高い格調を保っているところでしょう

盆栽鉢として生まれてきた宿命(?)から
骨董品としてガラスケースに収まっているわけにはいきません

ぴったりと似合う盆栽を持主様が手に入れたときには
さっそく出動となるわけですからね

私達盆栽人が古い盆栽鉢に格調と同時にある種の活力を感じ取っているのは
このように盆栽鉢には定年がなく、永遠に現役として存在しているからからもしれません



外縁、隅入り、雲足なと盆栽鉢としては凝った造作でありながら
入れる盆栽を引き立てるという実用の役目を忘れてはいません

各パーツはあくまで控えめであり
全体のバランスを壊さないよう配慮されています



真上からの図

外縁の幅も広すぎずにあっさりとしていますね



鉢裏と足の様子

この角度から見たときだけ、この鉢の骨組みの堅牢さが感じられます
つまり必要以上のしっかり感やゴツサは普段目立たぬ箇所に隠しておく作者の配慮なのです

表面の見た目と実用品に求められる堅牢さとのバランスの接点がこの面にあるわけです



落款
「尚古堂製」



支那鉢の最大の特徴であるヘラ裁きが見られる隅入りの外縁や雲足付近
とにかく一発仕上げのヘラ痕から作者の息吹が感じられます



生きているような質感が輝く良質な土目です



作者の息遣いさえ感じられるヘラの痕



足裏の様子
傷の発見のポイント

この尚古堂はもちろん無傷完品でしたが
この機会にニュー(ひび割れ)の発見の仕方を簡単にお教えいたしましょう



赤線で示したあたりがニューの入りやすいところですから
手の平に載せ反対の中指の背中で赤線のあたりを軽く叩く



この図の赤線も傷を発見するポイントです



小さな鉢であればこのような持ち方も可
この形で四隅を叩くとかなりの効果ありです

このように叩くと目には見えない微小なニューでも
ひび割れ特有の濁った音がします

最終的に専門家の強力な検証法です
見た目に傷が発見されなくとも、音が濁った場合は傷ありと認定されますから

ぜひ皆さんも身につけてください

2016年6月1日水曜日

舞姫ボディー作り

今日の教材の舞姫もみじの履歴を申し上げると

一昨年(2014年)に取り木をして
昨年(2015年)の春に本植えして一年間肥培しました

今年(2016年)の春は植替えずに、ひたすら元気をつけ、根っ子の充実を図り
超ミニの基礎作りにかかっています

ともかく、盆栽はしっかりした骨格が一番大切です
ですから、盆栽作りはボディー作りなんですね


右側が主になる幹で


その左が子幹になります
赤字印の外側の2本は外して双幹体とします


後ろ側から見た様子


赤線のところから切り戻して幹模様をつける計画ですが
赤線ギリギリまで追い込むのは入梅か夏ごろまで我慢します

いきなり追い込むと傷口が塞がる前に焼け込む恐れがあります
辛抱して、ここは気長に待ちの体制ですね、焦ってはいけません


後ろからの様子


いきなり赤線までは追い込まず、2節ほど手前で切っておきます
これは、下部に残した枝葉に勢いがつくのを促す意味も含んでいます


入梅もしくはそれを過ぎる夏ごろまでは、現在の姿で培養します


赤矢印の2本の枝は非常に大切です
左は将来の幹筋を形成し、右は一の枝になります

また、不定芽が吹きやすいあたりは
赤点で示したあたりです


小っちゃくって、ずんぐりしてて
可愛くて、しかも力がありますね、逸品の匂いがします

骨格の基礎の予想図(あと1~2年後)
樹高は5.0㎝以内を目指します

2016年4月29日金曜日

取り木発根!

例年であれば関東では、3月初旬から中旬ごろがもみじや楓類の取り木の適期でしょうが
今年のように暖冬で春の訪れが早い場合などは、10日単位くらいで時期を早めてもいいでしょう

今年の私は、暖冬を意識して2月の下旬にはすでに作業を始めて
3月の末ごろにはあらかた終了としました

数日前、その最後の段階で日付を記しておいた数本の中の2本に発根を見つけました
そろそろとは思っていましたが、予想よりも10日ほど早い気がしますね

やはり気温が微妙に高いのでしょうね
ともあれ取り木の発根に接する時は、何時ものことであっても、やっぱり得したような気になりますね(笑)

参照記事 2014/05/23  2015/05/29


今年一番の発根を見つけました
針金で結束してくびれた箇所なのでずいぶんと早い発根です


水苔が流れ落ちてしまったため
乾燥して赤点の箇所からは発根していません

厳密にいえばこれは失敗
今からでも遅くはないので水苔を補充すべきですね


ここにも発根を発見!

このようなら剥皮した部分が露出していないので
いい状態の根張りが期待できます


取り木作業の収めに日付を記しておきました
一ヵ月と数日、四捨五入して一ヵ月で発根としておきましょう

順調ですねーッ
みんさんの成果は?

2016年4月22日金曜日

チリメン桂再生

長いこと盆栽をやっていて嬉しいことのひとつには
ぶつかって手にいれたものが思ったよりも出世したなんてときですね

それらがそう高価なものでなくとも
手にかけたなりに順調な進歩をみせるとそれは張り合いが出てきます

やはり盆栽趣味の醍醐味は
時間と手間暇をかけて育てるという素朴な行為がベースにあってこそ、極まっていくのだと思います

というわけで、先日久しぶりで寄った親しい同業者の棚の隅で
樹高10㎝くらいのややくたびれた感じのチリメン桂が目に入りました

幹に傷っけはありませんが、植替えをしていないせいか
痩せ気味であまり樹勢もいいとはいえません

ただ、素直な幹筋とまあまあに整った枝順がいいと云えばいいくらいですが
あとは、値札のラベルに記されている数字も気に入ったんです(笑)

1.2万円

ほんとかよ!?


「安かったら値切れ」は盆栽屋.comのもっとも大切にしている盆栽哲学

すぐさま「このチリメン、定価の半分か!?」とぶちかましておいて
最終的に8.000円でゲット

安ーッ!


鉢の中の根の状態はいっぱいで植替えの周期はきていますが
まずは全面葉刈りをして輪郭線を追い込む方を優先させました


チリメン桂は全面的な追い込みと植替えを同時にやってはいけません
どちらかを先にやってやや一ヵ月の間隔をおいて次の作業にかかるようにします


指先、ハサミ、ピンセットなどを使い分けて
根気よく全面的な葉刈りを仕上げる


追い込みながら輪郭線を整える


現在の正面よりもやや左に振ったあたりが新正面の候補
作業が終わってややピリッとした姿になりましたね

とても8.000円とは思えない(笑)

肥料も切れた感じだったので置き肥をやって
新芽が伸びて展開するまで我慢します

約一ヵ月経ったら植替え可能です
またご紹介しましょう

ちなみに、このチリメン桂はしばらく教材にするので「非売品」
ではよろしく

2016年4月18日月曜日

もみじの芽摘み

針金かけや剪定の整姿(せいし)作業に比べてははるかに地味ですが
その重要さにおいてはまさに肩を並べるのが芽摘みの技術です

過去の参照記事がありますから是非ご覧ください

2009/04//09  2009/04/30


安部性もみじ

桜開花前線の例から見ても細長い日本列島では、九州と北海道では芽出しの時期は
おそらく一ヵ月以上の時間差があるでしょうが

そこで関東中心でお話を進めるとすると
近頃の芽の進みかたはおおよそ↑の画像くらいで、まさに今は芽摘みの最適期です


ちなみに、このようにピンセットで軽く摘まめるくらいに柔らかいうちにやりましょう
芽の先端の節間(せっかん)が伸び切らないうちがいいですね


輪郭線から飛び出した徒長芽を軽く摘んだところ
この程度でも芽先の制御になって徒長が防げ、各枝の強弱のバランスがよくなります


舞姫もみじ

舞姫もみじの芽がいっせいに吹きだしてきました

2節3節と見る見る伸びてきますが、ハサミで剪定するのは早すぎるし
ほっておいては徒長しすぎてしまいます


そこで木の勢いを制御するために、全体的に芽の先だけ摘んでやります
このように徒長を防ぐためにも必要な作業が芽摘みです


ハサミやピンセット使わなくとも柔らかい芽は指先や爪の先で摘み取れます


全体の輪郭線を保つための芽摘み終了


舞姫もみじの株立


美しい芽出しの美しい葉を鑑賞するために
全体の輪郭を整えるように芽摘みをしました

それではみなさん、がんばって!

2016年4月6日水曜日

舞姫もみじの鑑賞と挿し木

一昨年(2014年)の入梅に取り木をして、昨年(2015年)の春に根をさばき
一年間しっかりと肥培した素材(三年目)

まだ骨格が完全には出来上がっていませんが
春の新芽が展開してきて何とかもみじ盆栽の雰囲気が出てきました



五本立の株ですが、春先に小さな化粧鉢へ移す時に
右外側の主幹の節間が長いので、一度追い込んで作り直すことにしました



右外側の主幹は立ち上がりから一節残してバッサリと切っておきました
現在そこから数本の不定芽が伸びているので、入梅前には将来使う芽も決まると思います

それにしても舞姫もみじの葉は細かくて切れも深く
おまけに赤芽で色鮮やかですね



新芽が展開する前の写真

もみじは完成度が増すと寒樹の姿が好まれますが
小枝のさびしい未完成の段階では葉があったほうが見られますね

以上、取り木をかけてから三年目(まるまるでは2年間)で
基礎が固まってきて何とか鑑賞できるようになりました

ここまで来ればしめたもの
後は焦らずゆっくりと持ち込めば年ごとに成長間違いなしですね

さて、次は舞姫の挿し木の中間報告です



右の大きめの4鉢は3/10に挿したもの
左側のやや小さめの1鉢はスクールの生徒さんが3/20にやったもの

今までに特に心がけたポイント

1 10日ほど前から、ビニールハウスの中でも入口に近く
  しかも、直射日光が数時間当たる場所に移動しました

2 挿し木作業をした時と、その後は10日間隔で消毒(トップジン乳剤)をしています
  
3 葉水はほとんどやらず、鉢の水も過湿にならない程度にしかやりません
  灌水は数日に一回くらい、表面がやや乾き加減になってからやるようにしています


挿し木後約30日ほどが経過しても、黒く変色(腐食)した挿し穂は見当たりません
好調!好調!

ほとんどの挿し穂の芽が動き始めていて
ご覧のように2割りほどは早くも葉が展開し始めていますね

続く

2016年3月23日水曜日

舞姫もみじ挿し木

毎年3月の中旬を目安に挿し木を実行するようにしていましたが
今年は特別な暖冬だったので早めの実行を予定していました

挿し木をするにあたっての心がけることや注意点は
思いつくまま箇条書きにしておきましょう

1 鉢や用土は清潔なものを使う(細菌予防)
2 乾燥もいけないけれど過湿にも気をつける(べと病予防と自立の促進)
3 挿し木をした直後に一回、その後は週一で2~3回
  トップジンで殺菌消毒する(ベと病予防)
4 挿し木床(鉢)を直接地べたに置かず
  地上30㎝以上の棚や箱の上で管理する(細菌予防)
5 挿してから10日ほどは密封状態を保つが
  それを過ぎたあたりからハウス内少しずつ外気を入れる(自立の促進)
6 2週間ほど経過してやや芽が動き出したころから
  ハウス内の明るい場所に移動し、少しずつ日に当てるようにする(自立の促進)
7 一ヵ月を経過したころから直射日光に当て始めるが
  なお過湿に陥らないように心がける

過去の参考記事

2013/05/29   2014/10/22


今年はちょっと多めに挿し木しました
用土は赤玉土と鹿沼土を5割りづつ混ぜました


挿し木鉢は直接地べたには置きませんよ
高い処へ置いたほうが細菌が鉢に入りにくいですからね


植替えたものは根があるので地べたに直接おいても
ちょっとはそっとでは病原菌に負けませんが

挿し木の穂は根がない状態ですから
切り口から腐敗菌などが入らないように、置き場所と消毒で守ってやりましょう

ちなみに、べと病などの病原菌は
おもに地中で生息しているんですねー

では