2017年11月27日月曜日

フリースクール・けやき超ミニ















昨日は、今月最後のフリースクール講習日。ここ数日朝晩の冷え込みは厳しくなって霜も降り始めました。まさに本格的な盆栽シーズンの到来ですが、手入れの順番としてはまず雑木類の剪定から始めるのが定石でしょうね。

というのも、雑木の代表格であるもみじやカエデ類は晩秋の休眠期に入るのも早いけれど、早春のお目覚め時期もすこぶる早い。12月の末ごろにうっかり切り込むと樹液がポタポタと吹き出してくることもあります。

その様を見ると、人間に例えれば多量の出血を見るようで決して気持ちのいいものではありませんね。ですから雑木の剪定はできるだけ早く、そうですね、12月の半ばごろに終わらせたいですね。その適期を逃した場合は春先に根の剪定と同時に行うようにします。

さて、今日ご紹介するのはツカさんが取り木から仕立てたけやきの超ミニ。細いれど姿といい古さといいかなりの優良品ですね。それに双幹体なのが珍しくて新鮮です。ここまで来ればあと1年枝先の面倒を見て、来年度は展示会の松粕類の添えとして使いましょう。まだまだ伸びしろのある超ミニですよ。気合を入れてがんばりましょう。


2017年10月19日木曜日

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。

プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります。好きな方を見つけて差し上げるのも方法ですが、次の愛玩者を見つけるのは案外簡単ではありません。本音はまさに時間の問題でもあるんです。

ご家族の側から云うと、ずいぶんと可愛がってきた生命ですから当然愛着もあって、金銭で割り切るわけでなくともやはり命ある生き物であることから、早めに手放さざるを得ないのが実状なのです。

このあたりが盆栽趣味のほろ苦いところでしょうね。

ところで、このお宅ではご家族の方が亡くなったご主人の趣味にずいぶんとご理解があったようで、四十九日の法要が済むまでは水やりをかなり頑張ったようです。私としても、主人に置き去りにされてボロボロになった盆栽でなくてホットしています。


ご家族の方がざっと数えたところでは、ひっくるめて500鉢ほど。ご覧のようにそうレベルの高い盆栽ではありませんが、とにかく大小あわせてそれくらいの数はあるようです。


手狭な宮本園のビニールハウスは満タン!ふだんは盆栽を置き場ではない玄関周りにも溢れ返った土払い品。


窮屈、これじゃ水やりもできない!!!


これまたふだんは盆栽を置かない表のバス道路沿いの塀際までビッシリです。


バス道路に面した塀際は、物騒なのと日当たりの関係で盆栽置き場には不向きな場所ですが、この際そんなこと云ってはいられません。買っちゃったものだからとにかく頑張って運びました。信じられない、500鉢!!

ちなみに、黒松、五葉松、錦松、真柏、レンギョウ、ニレケヤキ、寒椿等々の樹種がありました。

2017年10月6日金曜日

黒い実の姫柿

市内の親しい愛好家さんから黒い実の姫柿(老爺柿)を譲ってもらいました。以前から頼んでおいたのですが、なんでも秋になって柿の実が色づいてこないと真っ黒い実成りの特徴が出てこないそうで、ずいぶんともったいぶって今まで待たされました(笑)。

この方はかなり以前から姫柿のいろいろな種類の蒐集や繁殖が得意で、実生や挿し木で新品種を作出したり繁殖したり、また園芸の範疇に止まらず盆栽としての樹形作りまで手がけています。


入梅から夏ごろでは黒実の特徴はまだ見分けがつきにくいが、秋になると多品種に先駆けて赤っぽく色づき始めます。さらに実の形が図のようにやや細長くなっているのが特徴です。名の知れた楊貴妃や都紅などの赤系統の品種とは形が違いますね。


朝晩の気温が下がり始める今頃になると色が濃くなり始めます。肥料がよく効いていると実の艶も一段と冴えてくるようです。すると、次第に図のように墨を吹きかけたような細かい斑点が現れてきます。これが下地となって霜のころには真っ黒い艶のある実成りへと変化していくのです。きれいですよ。


最初はゴマ状ですが、次第に墨を塗ったような艶のあるみごとな黒色へと変化していきます。


日当たりのいい箇所ほどいい変化が見られます。また、実の形は丸や楕円ではなく、このようにやや胴のくびれた細長い形をしています。

まあ、私達盆栽人は、実の色に強い拘りをもって品種の蒐集に一番の重心を置いている、いわゆる「姫柿専門愛好家家」ではありませんから、あくまで植物の盆養と造形を優先させる盆栽作りの気持ちを忘れてはいけませんが、たまには珍種奇種の面白さを無邪気に喜んでみるのも一興かと思います。

そんなわけで今年の秋は、黒い実成りの姫柿を鑑賞してみるつもりです。

2017年9月30日土曜日

寒冷紗外し

入梅中には雨が少なく、かと思えば夏の間には局地的な大雨があったり、さらに秋になっても日照の少ない日々が続いたりと、非常に不安定な気候が続いています。

そんなわけで、今年は比較的早めから寒冷紗外しのタイミングを狙っていました。遅くなれば秋の充実期に日照不足を加速させてしまうからです。

とはいえ、設置してあるものを取り外すのはついつい億劫な作業なので、、自らを励まして叱咤するのが毎年の習になっています。ああ、しんどい!


斜めの日照を遮るためのカーテン状に張った寒冷紗をまず外す。屋根の部分はその後。


カーテン状の寒冷紗を外しただけで、グーンと明るさが感じられます。。と云うことは逆に云うと、寒冷紗の効果が実感できるときでもあります。カンカン照りの元ではかえって遮光率50%の効果は実感できにくいものなのです


あらかたの作業が終わりましたが、来年用に備え寒冷紗の収納だけは丁寧にやっておくこと。このわずかな気遣いが来年の設営作業の能率に大いに影響します。

ところで、今年の夏の日照が少なかったせいで、正面に写っている舞姫もみじの素材の作柄がいいようです。やはり例年よりも真夏の環境がやさしかったようです。

例年だといくら寒冷紗下でも葉焼けで傷んだ部分もあって、葉全体がこれほど青々としてはいませんね。


さて、この五葉松の大木も寒冷紗の下で夏を過ごしました。その昔はどこの盆栽屋でも、五葉松の大木は一年中棚の不動の位置に鎮座ましましていたものですが・・・

つまり、春から秋までの培養期はもちろん、夏でも涼しい場所へ移動する必要はありませんでした。そして、寒さにもビクともしない強靭な性質に恵まれているのですから天下無敵です。

ところがこの20年ほどのこと。気候の温暖化によって手がかからないはずの五葉松の培養法がやや変わってきました。つまりお勧めしているように、真夏の間の寒冷紗による保護が必要になってきたのです。


寒冷紗のお蔭で五葉松も真柏の小品も上々の作で、葉色抜群です。


入梅明けから9月中旬まで、真柏、黒松、杜松以外の樹種は30~50%の遮光率の寒冷紗で保護してやりましょう。
それでは。

2017年9月21日木曜日

胡蝶侘助根上り

胡蝶侘助椿(コチョウワビスケツバキ)は、深い緑色の艶やかな葉とピンク色の可憐な小輪の花が持ち味ですが、さらに時代感あふれる灰褐色の木肌の趣も、盆栽としての優れた要素に数えられます。

9月に入って間もなく、藪椿(ヤブツバキ)の愛嬌のいい根上りに出会ったことはお伝えしましたが、その興奮もさめやらない月半ばごろ、隣市の愛好家さんから胡蝶侘助の根上り樹形を譲ってもらいました。

私はギャンブルはやりませんが、その世界でいうところの「つらがつく」というやつで、盆栽の世界でも同じ傾向の樹種や樹形に続けて出会うことがあります。
侘助という椿の樹種名は、安土桃山の時代からあったようです。この椿を愛した千利休と同じ時代の宗全という茶人の還俗名から、そう呼ばれるようになったそうです。

3本の根上り状の樹形で、地面から上がった3本の根は樹高の三分の一あたりで一本の幹となり、さらに三分の一ほど上がって、さらにその上で樹冠部を形成しています。


一の枝付近の正面に小さな枝抜きの傷がありますが、年月さえかければ必ず肉巻き可能な傷です。さらにその上(下から二番目の赤点の箇所)に大きな切り傷がありますが、旺盛な勢いで肉巻きしているので(500円硬貨ほど)必ず数年で治癒します

一番上の赤点の幹にかかった針金傷はちょっとばかりやっかいですね。
時間の経過とともに目立たなくなるでしょうが、正直ちょっとばかり年月がかかりそうです。


ありがたいのは傷っ気の少ない根上り付近の様子。
持ち込みとともに時代感が滲み出て、貫禄が出てくるでしょう。

2017年9月10日日曜日

舞姫ボディー作り

昨年の9月中旬に同じ題名で舞姫のボディー作りを紹介しましたが
さらに読み返してみると、おなじく6月の初旬にも同テーマのページがあるようですね

参照してください

2016/9/17  2016/6/1  2015/6/5

さて、今年の舞姫のボディー作りの進み具合を申し上げますと
まずは、第一に肥培して太らせること、そして第二に個性ある樹形作りを目標にして出発しました

今年の夏はかなり変則な気候でしたが
さいわい日照の少なかったぶん、葉焼けは少なかったようです

さらに、入梅から夏にかけての強い剪定は控えめにした効果で
新芽はまあ順調に伸び、現在は秋に入り枝葉の充実が外見にも現れております

夏場の葉焼けや入梅以後の強い剪定は、秋口にかけての肥培を一時的に休止させてしまうので
種木作りの場合などは特にはこの点に気をつけてやる必要があります

個性的な樹形については、入梅前後の剪定を控えたため
思わぬ箇所や方向に不定芽が暴れたりして、予想外の効果をもたらしているのが楽しみです

それでは見本の素材をみながら
近未来の姿をシュミレーションしてみましょう


5~6年生の挿木苗

針金で結束したあたりで直径は2.3㎝ほどなので
来春に取木をして独立した時点では約2.5㎝以上の堂々たるボディーになっているでしょう


針金で結束したあたりが根張りになります
その上の切り返しによる模様部は肉巻きが完了しています

上の赤線を切り返して次の模様を作ります(来春以降の作業となります
上の赤点の枝が新しく芯となります


ボディーの形

ここまで来ると盆栽作りの基礎はああらかた7割の道程は過ぎています
焦らずにじっくりといきましょう


独立への手順

取木(来春3月)→ 取木外し(入梅ごろ)→ ボディー作成(夏ごろ)→ もう一度根さばき(翌々春)


参考画像(後姿)


参考画像(後姿)


もう一鉢

今度は個性的な変わり木です
取木をした痕に出た不定芽が自由に伸びて変てぐちゃぐちゃです


余分な枝葉を消して骨格部分だけ見てみましょう
なんとか形になりそうですね


さらに小さくボディーだけを取り出して見ると
足元がモッコりした株立状の超ミニが取れそうですね


こんな感じです
案外面白いかもしれませんよ

それでは

2017年9月6日水曜日

藪椿変わり木

先週の土曜日、私の古い友達が主催している交換会で見つけた
藪椿の変わり木をご紹介いたします

やはり古いお付き合いの隣市のセミプロさんが持ってきた売り物で
なんでもさる愛好家さんが長い年月可愛がっていたそうです

もちろんこんな掘り出し物は、めったあるものではありません
チャンスは逃さずビシッと決めました


義村秀峰の緑釉(りょくゆう)の古鏡型(こきょうがた)に入っていて
鉢のバランスなどは申し分ありません

さて、ご覧のように、肩から落ち枝のある変わり木調ですから
見る人によって正面が異なってくることも予想されます

現在見ているのは裏面ですが
この角度が正面になることもあり得ると思います

こんな感じの変わり木は、回し台に載せて飽きるほどに眺めているうちに
自然と自分の感覚にあった正面が決まってくるものですから、決して慌てたり焦ったりしてはいけません


ぐるぐる回して飽きるほどに眺めているうちに
やっと自らの感覚にマッチした正面が決まったようです

この角度が正面です

改めてそう宣言したのには訳があります

じつは、以前の持主さんが二つの正面を一方に決めかねて
裏表のどちらかからも眺められるように、作り込んでいたらしいのです

盆栽の正面を変更することは、ままあることですが
二つの正面を高いレベルで維持していくことは、これはなかなか難しそうですね

ですから、これからはどっちつかずの中途半端はやめて
新しく決定した正面から厳しく盆栽美を追求していくつもりです


この藪椿の樹高は62㎝ほど
根上りの自然な模様と器用な落ち枝の味わいが見どころですね

冬から早春にかけてひっそりと膨らむ蕾と真っ赤な花弁
藪椿は静寂と艶ややかな風情を併せ持っていますね


やわらかな模様と落ち枝の妙
持ち込めば持ち込むほどに趣は深まっていきます

椿というジャンルはポピュラーな割りには名木が少ないジャンルですね
みなさんももっと周囲に目を光らせて椿の盆栽を探してみてください!