2004年6月21日月曜日

青閑と双葉山

柴崎青閑作

浮き彫りされているのは、名横綱双葉山とその70戦勝を阻んだ安芸ノ海の名場面
昭和14年のことです

青閑は明治44年の生まれですから、青年期から壮年期に差しかかったころの
まさに、当時としては「大事件」とも言うべきニュースでした

青閑は明治44年生まれ、双葉山は明治45年生まれ、まったく同じ年頃
そして、昭和14年といえば太平洋戦争開戦まであと二年、つかのまの平和を享受できた時代でした

戦前の下町には「相撲見物」「芝居見物」「お花見」「お祭り」「川涼み」など
江戸期から伝わる庶民の遊びが盛んだったようです

この鉢の制作年代は最初期というだけで、はっきりとは判定できませんが
相撲好きの江戸っ子らしく、青閑も深い感動をもったのでしょう

そして、強烈な印象を受けたこの名場面を素直に鉢製作に反映させたことは
自由な精神の持ち主である青閑の面目躍如というところです

制作年代はこれからきっちりとした検証が必要ですが
作風や使い込みの味から判断して、青閑の最初期の作品であることは間違いありません

奥行きも深さもたっぷりとして実用にも優れ
相撲の名場面を彫り込むという奇抜なアイデアが功を奏した、希少な名品です

拡大図

懸命にこらえて打っちゃろうとする双葉山の強い意志を表した顔の表情
しゃにむに寄ってでる安芸ノ海の必死さ、躍動感溢れる彫り込みです

土俵の俵にかかった双葉山の右足が大きく描かれており
絵師としての青閑の描写力の偉大さが垣間見える箇所です

この足の表現が、安芸ノ海の躍動する後ろ姿の筋肉の表現とあいまって
絵としての構図や迫力を高めています、みごとです

側面をのぞく角度より


裏の正面
相撲の軍配の文字「天下泰平」


胴の側面に落款
「青閑・新」と印されています

もちろん鉢裏にも「新」の落款があります

お楽しみいただけましたか?

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