2012年11月16日金曜日

スクール速報・山もみじ中品

以前、「元気で積極的な中高年」とご紹介した、わが盆栽フリースクールの最古参で最年長のツカさん
盆栽だけでなく、語学学校に通うなど、初々しい向学心に燃えた少年のようなその生き方には溌剌としたものがあります

相棒のターさんとのやりとりがおもしろく、まるで息のあった漫才のよう
真面目なうえにユーモアのセンスだってなかなかです

ツカさん自慢の山もみじが話題になると、「このもみじも、いずれは年下のおれのもんさ」などと年下のターさんが仕掛ける
「なーに、人生なにがあるかわからんよ、番狂わせは相撲だけじゃないぜ」、と笑いながら切り返す

さて、そんなツカさんが昨年から手がけている中品の山もみじ
今年の厳しい残暑にもめげずに作柄は上々で、葉を焼かなかったので11月になっても青々としていました

春に植替え、骨格を見直して不要枝を外し
いよいよ来年はさらなる樹格の向上にむけて踏み出す段階です


ゆったりとしたやや斜幹ぎみの模様木
右に差した一の枝に流麗な動きが感じられる雑木らしい木姿


安定した根張りと立ち上がりに自然味がある
培養を重ねて盤状に発達する予感に期待がふくらみます

また、すでに木肌にはもみじ特有の縦縞が現われていて古色感は抜群
この美しい木肌が、このもみじの品格をさらに高めていることはいうまでもないことです


中間の幹筋拡大図
やや枝数の多かった中間には枝を切除した痕跡があります

適切な培養管理により1~2年で治癒する程度ですから
心配することはありません


いくつかの課題が残されている頭頂部
↓で詳しく説明いたします



1は表情豊かな利き枝です
これ以上太らないように気をつけながら大切にします

2も必要な枝ですが、やはり抑制しながら育てたい

3はやや斜め前に向かった枝で、やはり必要な枝ですが
なるべくコンパクトに抑制しながら育てます

4は近い将来には外すことになるでしょう
ただ、あまり性急な追い込みをすると、かえってその部分に熱をもってゴツクなることが多いので慎重にしましょう

5も定石通りに二叉に剪定することを繰り返し
枝先のほぐれを促すように

6の小枝を含む樹冠部は、実物を見ていた段階ではあまり気にならなかったのですが
こうやって画像で見ると、模様が大まかでギコチないし、4との間に空間が空き過ぎる感じです

これでは、針金の矯正か切り戻しにより
↓の図のように、芯近辺の幹筋の流れを矯正することも視野に入れたほうがいいようです


白線のような感じで幹筋を通せばやわらかさも出るし
幹の傾きと利き枝との構図的なバランスもよくなります

さてさて、このように素直さが見どころの模様木は案外に難しいですね
ツカさん、実物を見てもう一度検討してみましょう

2012年11月7日水曜日

スクール速報・水石台座

トリクンはフリースクールの最年少で、参加するようになってまだ1年半くらい
とはいえ、その人なつこく素直な人柄からごく自然に仲間にとけこみ、急激な速度で進歩をみせている超新人です

特に水石の台座作りでは、試作品第一号を見せられたときから
「この子は才能あり」と強く感じました

その後は、紫檀の本格的な材料で4から5作くらいの段階ですが
私は彼には、高いハードルのプロ並みのアドバイスをと心がけてきました

彼は現在の段階においても、早くもすでにアマチュア作家としては十分な制作力を持っていますが
ただ、彼の潜在的な能力からすると、この段階で合格点をやってしまうのはまことにもったいない

もちろん、プロの台師になれとは勧めませんが、プロ、それも達人並みのセンスと技術を持った
アマチュア名人になってもらいたいと期待しています

これからたくさんの水石に出会い、いろいろな経験を積んでいけば
必ずそれは達成されるでしょう

では、実際に彼の最新の作品をご覧に入れましょう


佐治川の山形石小品(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.4㎝)

以前に付いていた台座の画像

トリクンはこの佐治川石の彫り込みが中途半端であるため、台座から石が浮いて見えるので
練習のために紫檀の台座を新調させてくれ、と言ってくれました

この台座もアマチュアの作品とは思われ、紫檀や花梨ではなく
雑木類のありふれた材料ではありますが、石の映りはよく仕上げもまあまあ


後ろ姿
確かに彼の指摘のようにちょっと浮いた感じですね
もう少し台座を彫り込めば、据わりがよくなり落ち着いた感じになるでしょうね


さて、↓でトリクンの紫檀の台座をご紹介する前に従来の台座をよく観察しておいてください


左側半分の拡大図


右側半分の拡大図

台座作りはセンスのほかに非常な集中力と根気の要る作業
これくらいのものができれば、アマチュアの台座師としてはかなりイイ線いってるんですよ

さあ、これからがトリクンの作品ですよ
↑の従来の台座とよく見比べながらご覧下さい


トリクンの紫檀台座(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.1㎝)

約3.0㎜ほど深く彫り込んだため全体の高さが3.0㎜ほど短縮され
石と台座に格段の一体感と落ち着きが出ました(とにかく0.5㎜がものをいう世界)

このように水石と台座が吸い付いたように感じられることが肝腎
石を引き立てながら目立ち過ぎないように、地味にしっかり自己主張する台座が優れた作品といえます

また、正面に2本あった足が1本除かれたため
左右の広がりが演出され景が大きく感じられるようになりました


やや角度をかえて正面より

周囲の側面にやや変化をつけたデザインにより
変化と動きが巧みに演出されています


従来よりも深めに彫り込んだことがわかります

右側、至近距離に足が2本配されています
台座の足の本数や位置は制作者がかなり神経を使う箇所です


仕上げの研磨も大切
木のぬくもりと硬質で精緻な線の融合が紫檀台座の魅力です


正面より


台座内部の彫り込みのようす
トリクンの精緻なノミの痕跡をご覧下さい


ノミの痕跡が美しく感じられるようになってきましたね


後ろ姿


足の数、足の位置
石との一体感を演出するためには、非常に大切な要素です


内部のノミ跡をもっと見る


内部拡大図


内部で石が安定するように石底の凸凹を正確に捉えています


足の形や大きさ、高さも重要な要素

みなさん、トリクンの台座、いかがでしたか?

トリクンはもっともっと上手になりますよ
またご紹介します

ご意見お待ちしていますよ

2012年10月18日木曜日

きんず培養法のポイント

小品やミニの実もの盆栽として、たくさんの魅力をそなえているきんず
品種的な人気も高く、愛好家が一鉢は持ちたい樹種のひとつには必ず入るでしょう

実生の発芽率もいいので、繁殖はいたって簡単だし
取木も発根しやすいので、初心者でも容易にいい素材がゲットできます

晩秋から冬にかけて、黄金色に熟した小さな実と濃い緑色の葉との対比がじつに美しく
培養を重ねるごとに、木肌は暗褐色となり次第に縦縞が入って古色感をおびてきます

なのになぜか、大品中品はおろか小品やミニの世界においても
市場に出回るきんず盆栽の数は、他の樹種に比べて極端に少ないのが実情です

また、愛好家さん達にもきんずに対する苦手意識を持つ方も多くて
手を出すのを躊躇しているのに、よくお目にかかります

これはひとえに、きんずの正しい培養法が
しっかりと愛好家さんたちに伝えられていないためだと思われます

専門家のプロの間でさえ、「きんずは寒さに弱い」
ただそのことだけがいい古された合い言葉になっていて、もう一つの肝腎なポイントについてはあまり話題になりません

きんずは温暖な気候を好むと同時に
根の過湿(過水)を極端に嫌う性質があるのです

ですから、具体的なきんずの培養法としては、冬の寒さを防ぐとともに
入梅や冷たい秋雨などには、ぜったいにあててはいけません

長雨による過湿で根の活動が悪くなって衰弱の原因になります
また、いちど衰弱した根はその年のうちにはなかなか復活しにくいものです

しかし、水は好みますから、水はけのいい用土で植替え
乾いたらたっぷりと水やりをやることは必要なことです

これらのことが、具体的に専門から愛好家さん達に伝えられていないために
せっかくの愛樹を弱らせたり枯らしたりして、きんずから遠のいている方々も多いと思います

私は、春から秋までの生育期間中、日当たりのいい雨のあたらない軒下のような場所に置き
過湿にならないように気をつけながら、乾いたらたっぷりと水をやり

冬は厳重にムロ囲いをします
その場合は、霜に当てないことと凍らないことが最低限の条件ですね(5℃以上なら理想的)

くどいようですが

1 寒さ対策
2 成育期の鉢内の過湿

このふたつを克服すれば、きんずは絶対に元気に育ちます
それを信じて、この魅力あふれる樹種に親しんでいただきたいものです

過去のつれづれ草でもこのことはお話ししたつもりで、重複すると思いますが
みなさんにきんず盆栽に親しんでいただきたく、再び取りあげた次第です

過去の徒然草へ

2009/5/19   2009/6/19   2009/8/2



超ミニのきんず

甲羅状の足元が魅力的です
徒長させている新芽の色もいいですね

このきんずの超ミニ
さる愛好家さんから放出されたものですが

じつは、植替えのさいに確かめたところ
こんな大きな甲羅なのに子根が数本しかなかったそうで、慌てて仕立鉢に植えて養生していたところです

葉色や芽の勢いがいいので、子根が少ないのを承知しながら
自分のお楽しみ用に買ってきたものなんです



きんず専用の置き場に収って1ヶ月以上経過、秋も深まってきましたが、元気元気
来年の雄姿をみなさまにお見せすべく、この冬はしっかり面倒見ますよ



後ろ姿



将来はこんな風に作り込んだらいいな
きんずのいいところは、他の樹種よりも極端に形成層が厚いため、かなり大きな傷を作っても肉は巻きます



樹髙13㎝

入梅にも冷たい秋の長雨にもあてないで育てれば
こんなに葉色もよく、樹勢は順調です、鉢内もよく乾きますよ



今月の初めごろに入手したきんずの中品
きっと、ありきたりの培養をしてきたのでしょう、樹勢は良くも悪くもなく、ふつう程度

でも、このくらいでは飛躍的な成長は望めませんよ
秋になったからといって、ご覧のように簡単に古葉が黄ばむようでは、樹勢がノリノリとまではいきません



来年の今ごろには、深い緑色の葉がいっぱいに繁っているような作柄にしたいもの
それには、冬の保護を厳重にして、5月頃に植替え、入梅や秋の長雨にあてずに、きんず培養のセオリーに従います

よろしいですか、みなさん!

きんず培養のポイントは、寒さと長雨対策ですよ

2012年9月23日日曜日

初級・中級盆栽集中講座(3):雑木類葉刈り

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:5月中旬から6月中旬頃まで(春の新芽が固まってから)
  • 適用樹種:もみじ類・楓類・けやき・姫しゃら・ブナ・赤芽ソロ・カナシデなど(花や実よりも主として枝先の細かさを鑑賞する樹種)
  • 目的:短期間に小枝をふやす・徒長させない・内側の枝(ふところ枝)を守る
  • 道具:剪定小鋏・ピンセット
  • レベル:超初級から達人まで絶対必要な盆栽技術(葉刈りなくして盆栽なし!)
  • ここがポイント
    • 内側のふところ芽は力をつけるために葉を残してもよい
    • 作業後日陰で管理してはいけません、普段どうりの日当たりの良い棚に置きます

PARTⅠ 実技教材・山もみじ


春の芽だし前の姿です


春の芽摘みをして5月中旬以降になると、このように葉が生い茂って木姿が見えなくなります
触ってみて葉がしっとりした感じから、カサツイタ感じになれば、葉が固まっています
ところで、作業をする予定の前日に大風が吹いて、棚から落ちて鉢が割れてしまいました


さて、葉刈りバサミで葉を一枚ずつ刈り取ります
葉柄の部分を切ります、決して手でむしったりしてはいけません
葉柄の元の部分に隠されている次の芽も引っ張って取れてしまうからです
丁寧、丁寧!
根気、根気!


こんな要領で一枚ずつ刈り取ります


おおよそきれいに刈れました
ところで、春先に掛けた針金がはこの時期にはずしましょう
雑木類の場合は今はずさないと、たちまち食い込んでしまいます


よけいな芽をかきとり
徒長枝をつめ
必要な個所に針金を掛けます(これは秋落葉後にはずす)
今は植え替えの適期でないので、間に合わせの鉢に、根はほごさずに入れておきます
作業終了

PARTⅡ 実技教材・ケヤキ


養成中のケヤキの箒づくりです
かなりできあがっていますから、本鉢へ移すはずでしたが
今春はやりはぐってしまいました


さて、作業開始です
ところで、もみじと違って、ケヤキは葉柄が短いですね


面倒くさいのでハサミを捨てて、指で引っ張り始めました
おっととっと・・・・
さっきはハサミでていねいに、といったばかりなのに!
ご心配なく
ケヤキの場合は次の芽が葉柄の脇にあるので、引っ張っても大丈夫
次の芽は葉柄と一緒には取れません
小枝を折らないように気を付けて
指先を使いましょう


こんな程度でいいでしょう
まだふところの葉はかなりついていますが、これ以上踏み込むと
小枝を痛める恐れがあります
葉刈りの目的は充分に果たしています
全ての葉を刈りたい方は、ピンセットで一枚ずつ小枝を痛めないようにします


ハサミで軽く伸びすぎた小枝を剪定します
これで作業終了です

2012年9月22日土曜日

杜松芽摘み納め

長く厳しかった残暑も九州を襲った大型台風の通過前後から
やっとやわらぎをみせ、過ごしやすい気候になってきましたね

さて今日は、杜松の今年最後の「納め」の芽摘みについて勉強しましょう

盆栽のジャンルとして、杜松は黒松や赤松、五葉松などと同じく松柏類に入りますが
本来はヒノキの仲間に入るために性質は違っていて、培養的にもやや異なります

暖地に自生するため、整枝剪定などは真冬を避けた方が無難であり
植替えの時期も、春先よりも4月中旬から5月にかけて行ないます

培養的に念頭に入れておくことの主なことは、杜松の根は黒松や五葉松に比べてやや細根なので
根元の根の塊に水が通らないことがあって、衰弱の原因になることが多いことがあります

ですから、植替えの間隔があいている場合は、根元の芯の部分が乾きすぎないように気をつけて
たまには鉢全体を水につけて、たっぷり水がいきわたるようにするのも一つの方法です

それでは


8月15日撮影

8月22日に古葉掃除と芽摘みを行なった杜松
日光と高温を好む杜松にとっては、今年の猛暑はかえって追い風になって、培養は順調です

8月22日  8月24日


わずか20日ほどで順調に芽が吹いて、次の芽摘みの時期がきています

杜松の秋の芽摘み納めは、だいたい9月中旬から彼岸ごろにかけて行ないます(関東地方)
この時期に最後の芽摘みをすると、次の芽が吹いてちょうどいい長さで止まってくれます


作業途中経過

まだ各枝の隅々には摘み残しの芽が残っていますね
また、差し枝の先端は、勢いをつけるためにワザと伸ばしっぱなしにしておき、芽摘みをしません


特に勢いのいい樹冠部は丹念に摘み込みます
まだまだ摘み残しがあるようです


差し枝の先端を残して、芽摘み作業完了


作業完了の樹冠部


摘み込みを控えた差し枝の先端


作業完了後の後ろ姿


★ さて、これより付録の隠し技

なんだこりゃ!

さて、これは

1 部分的に勢いがよすぎるので、その部分の勢いを抑制し
  その部分の勢いを他の枝に行き渡るようにしたい

2 晩秋から冬の展示会に出品予定なので
  枝棚を薄く維持するために次の芽を伸ばしたくない

などの目的をお持ちで
しかも全体に樹勢のいい杜松の場合は、これから紹介する付録の隠し技で解決してみましょう


伸ばしたくない部分を遮光率30~50%くらいの寒冷紗で覆います
極細の針金でヘアピンのようにして固定します


この杜松の場合は、下枝に比べて樹冠部の勢いがよすぎるので
その部分を制御するのが目的です

しばらくするとj寒冷紗の下でも胴芽をかけますが
その芽は遮光されているので、伸びが制御されるという寸法です

作業後を施した場合の注意点

1 鉢そのものは日当たりのいい置き場所で培養すること
  決して日陰や寒冷紗下においてはいけません

2 10月の中旬頃になって、芽の動きが止まったころに寒冷紗を外し
  その後は十分に日光に当てるようにします

3 その他の培養は、作業を施さない杜松たちと同じにします

チャレンジするひとは、実験的に部分からはじめて
要領をよく飲み込んでから始めるとよろしいでしょう

では