2008年10月20日月曜日

もみじ樹形作り計画

前回のつれづれ草で取り上げた「紅千鳥」のように芽出しの美しい「山もみじ」
樹形作りにあまり突っ込まなかったので、少々物足りない方もいらっしゃったでしょう

そんな思いがしたので、改めて樹形作りの計画に触れてみました
それでは


白点と赤点の位置が以前に「節」のあった箇所で、ここを芽吹きのしやすい「芽ツボ」と呼びます
樹形作りにあたっては、この芽ツボの見極めが非常に大切ですよ

来春に切り戻して芯を立てる位置は、高さ4.0cmの赤点を選ぶのが正解
白点では、幹筋からの曲の流れが、わずかに間延びしてしまいますね

間延びした芯では、全体の印象がぼやけてしまい
逞しい足元や迫力ある幹模様も台無しになってしまいますね

樹芯は人に例えれば顔にあたります
きりっとしまって小さめに、これが印象の強い樹形作りのコツです


余計な枝などを消してボディーだけを見てみましょう
なおはっきりと樹形作りのポイントが見えてきます



・芯の赤点の右は樹芯として立て、左は樹芯を形成する枝の一本として使います

・芯の右下方にも芽ツボがありますから、これも枝として使えます

・左の細い枝は途中から切り戻して活用します

・右の一の枝が欲しいところには芽ツボがなく、将来の芽吹きは不可能なので
 来年の5月ごろに呼び接ぎを施します

・裏枝はちょうどいい位置にあるので心配なし

以上で芯と枝順の基本は出来上がります


完成予想図

3年くらいの計画でボディーと枝の基本は完成
その頃には傷もすっかり完治します

ちなみに完成予想樹高は7~8cm
必ず山もみじミニの名品が誕生します

2008年10月18日土曜日

もみじの話・盛りだくさん

今日はもみじの話ですが、取り上げた素材のおかげで話題が盛りだくさんになります
まずは「もみじの品種」と「樹作り」について、そして「葉落としや剪定時期」や「傷口の処理」などの細部に至ります

それでは始めましょう



この素材は、一昨年の冬にまとめて買い入れた山もみじの中の一鉢ですが
春の芽出しがオレンジ色がかった鮮やかな紅色で、山もみじとは明らかに違っていました

もしかして紅千鳥かなと思い、今年一年間芽出しから夏ごろまでしっかり観察しました
しかし残念ながら、かなり紅千鳥に近い特徴が見られるものの、真性の紅千鳥とはいい切れませんでした

山もみじの類はいわゆる風媒花で、いろいろな花粉が飛んできて受精するので
この素材のように、実生により親木と異なるいろいろな性質を示すことが多いのです


素材の葉形を調べて見ましょう
上の葉は5つに切れ込んでいますが7つに切れ込んだ葉も多いようです

紅千鳥と山もみじの両方の性質を併せ持った
いわば中間種のようなものでした

葉がすべて上のようであれば、他の特徴からして紅千鳥にかなり近いのですが
下の7つに切れ込んだ葉の割合の方が多いので、紅千鳥と言っては「うそ」になってしまいます

前回の「つれづれ草」で真性と類似種のお話をしましたが
まさに昔流通した類似種に近いものです


さて、こんどは樹形作り

昨年の春に、従来の芯であった幹をバッサリきって
一の枝を新しい芯として再出発しました

芯を徒長させ思い切り太らせたので
二年の間に幹のコケ順が理想に近い形で出来上がってきました


後ろ姿

切り戻した初期には、こちらの角度が正面になる可能性もありました


今年の春に貼ったカットパスター
内部で肉巻きが促進されるとカットパスターの表面にひび割れが入ります


当初の傷は2.0×3.0cmもありましたが、切って二年経ってかなり傷口が小さくなりました
現在の傷口の大きさは1.3×1.8cmくらい、あと二年で完全治癒するでしょう


カットパスターを貼りなおし


ふつう葉を落とすのは11月に入ってからがいいでしょう
葉の状態によりますが、あまり青々としている場合では芽が吹いてしまい寒さで傷めてしまいます

この素材の場合は、葉がやや黄ばんきており冬眠期に近い感じなので実行しました
なお、やや早めに行ったので、枝を長めに残しました


白点と赤点に芽つぼ(節)があり、この芽つぼから来春の新芽が吹きやすい箇所です
理想の位置は赤点(高さ4.0cm)ですね

この赤点から吹いた新芽に針金をかけて芯を作ります
大地をしっかり掴んだ根張り、幹模様、幹のコケ順など、迫力のあるミニサイズの山もみじの模様木を目指します

この段階では枝順にあまりこだわってはいけますん
もみじ類は呼び接ぎが容易なので、ボディー作りを第一に考えて作りこみます

2008年10月15日水曜日

梅もどきの素質

実ものが目に付く季節になりました
きょうは人気樹種の梅もどきについてお話しましょう

実もの盆栽の中でも落葉後の実成りの姿がとくに華やかな梅もどき
小さい葉と繊細な枝先も盆栽樹種向きです

しかしここで、この梅もどきを手に入れるときにみなさん(とくに初心者の方)に一言
「実の華やかさに惹かれて、大粒のものを買ってはいけません」

中でも「大納言」などという品種は、接木で仕立てた実が大粒で成りやすい園芸改良種なので
葉が大きく枝打ちも粗いため、小枝ができにくくとても盆栽向きではありません

実生から仕立てたもので、なるべく葉が細かく枝打ちが密な素材をみつけましょう
そのような盆栽向きの性質をもった梅もどきは、必ず実も小さめです

実生と接木素材との見分けは、足元の立ち上がりを見ればわかります
若い素材には接木の痕跡が残っていまから



実生の梅もどきの実と葉のようす
手持ちの中品を撮影したものですが、実と葉、枝打ちなどの性質は中程度です

中程度!?
そうです、実生ものの中にも、実や葉の大小や枝打ちの良し悪しがあるんです

まあ、あまりこだわっては本末転倒する恐れがありますが
できるだけ優れた素質をもった実生の素材を探すように心がけてください

2008年10月9日木曜日

紅千鳥もみじの特徴と見分け方

昭和のバブル期に登場した「紅千鳥もみじ」
当時あまりの人気に、「紅千鳥」のようであっても、厳格に判定すると首を傾げたくなる「類似種」も出回りました

春の芽出しは鮮やかなオレンジ色がかったピンク色ですが、入梅頃になると山もみじのように緑の葉になってしまうため
その後の見分けかがつかず、業界でもかなりのトラブルが続出しました

そして始末の悪いのは、上記の理由で「真性」と「類似種」の区別がつきにくいところから
盆栽界の悪しき習慣で、「だろう」が「だ」になってしまい、悪意でなくとも、最後に泣きを見るのは愛好家さんたちでした

紅千鳥の特徴は

1 春の芽出しの美しさ
2 やや小ぶりな端正な葉形
3 繊細な枝先
4 持込とともに真っ白に仕上がる木肌
5 取り木などの繁殖が容易である

などが挙げられますが

さあ、そこで問題なのは紅千鳥とその類似種を見分けるコツ
落葉期でも木肌の雰囲気で見分けが可能ですが、なったって今日ご紹介する葉形で判定するのが一番です

ちなみに、盆栽屋.comは生え抜きの「もみじ大好き人間」なので
「紅千鳥」登場の初期段階からこの判定法を身につけていましたから、トラブルに巻き込まれたことはありませんでしたよ

この方法は現在でも、専門の盆栽屋の間でも案外に知られていません
ですからこの記事を読んだ方は、今日から「紅千鳥の専門家」としてちょっと威張れますよ(笑)


今年取り木によってゲットされた紅千鳥の超ミニ素材(樹高4.0cm)

赤味がかった新枝の軸の色が紅千鳥らしい
でも、これは紅千鳥だよ、って言われなければわかりませんね

紅千鳥の葉

別な鉢の紅千鳥からから採取した葉、下の山もみじの葉とよく見比べてください
そして、その違いを発見しましょう (わっかるかな!?)

山もみじの葉

そうです、紅千鳥の葉は5ツに切れ込んでいますね
比べて、山もみじの葉は両端の裾に小さな切れ込みが入って正確には7ツですね

簡単なことですが、これが決定的な相違なのです

・「紅千鳥」は5ツに切れ込んでいる
・「類似種」や「山もみじ」は7ツに切れ込んでいる

のです

注)紅千鳥もみじの葉をよく観察すると、その中にたまたま「右の葉」のように
端ににちょっと切れ込みが入って(赤点の箇所)正しくない形のものが混じることもあります

これは紅千鳥が山もみじからの派生種であるため
先祖の血がたまたま出現することによるので、気にしなくても大丈夫

では

2008年9月12日金曜日

是好さの色紙より

先日市内の愛好家さんの数人と一杯飲んだとき、是好さんの話が出ました
是好さんが健在だったころに、市内の盆栽展示会へ度々私が案内役をしたものです

あれからどれほどの月日が経っただろう、20年か、いや25年は経つよ、などなど
ひとしきり昔の懐かしい話に花が咲きました

私の年齢は、業界(日本盆栽協同組合)においては、平均年齢を少しばかり上回っています
かなり上の年齢の先輩たちも大勢いるのですが、後継ぎのいる園では息子さんの名義になっていることが多いせいでしょう

しかし、市内の愛好家団体(日本盆栽協会・松戸支部)の一員となってみると
まだまだ下から数えた方がはるかに早く、若造の部類に入っています

しかし、改まって周囲を見回してみると
当時青年から壮年に差し掛かっていた私が親しくしていた方たちの多くが、今はすでにいらっしゃらない

また存命であっても、車椅子やら要介護の生活となっていて
盆栽を楽しむことはすでに無理となっているではありませんか

そんなわけで一杯飲みながら、あの人もこの人もと指を折りながら
懐かしさとさびしさにいつしか深い感慨を覚えてしましました

湿っぽい話になったなーとは思わないで聞いてください
これからが本番なんです

私は、20年も30年も前に亡くなった人たちの思い出話は
盆栽をやってなければ、ダアレもしてはくれませんよ、と常々思っています

あの人の持ってた○○、いまは○○さんが持ってて、よくなってるねー
△△さんが可愛がってた△△、オレのところ来てからずいぶん太ったよ

あの人は管理もよかったし腕も確かだったね
□□さんは目利きだったぜ、贋物なんか一発で見破っちゃったよ

盆栽は愛蔵品を人から人へと受け継ぐ文化であり
さらにそれを愛した人の人柄や精神性も、次代の人へと末長く語り継がれていくのです

まさに、「人生は短し、されど盆栽は長し」



是好さん直筆の色紙
山水図は当時としても珍しかったようです



裏の為書きの年号を見て驚きました
1978年と記されています

もうあれから30年経ったんですね、人の記憶ってやっぱりいい加減でした

2008年9月6日土曜日

加茂川茅舎石

遠山石、滝石、磯形石などともに
私たちに親しみのある水石に茅舎石(くずやいし)の分野があります

茅舎(くずや)とは日本古来のカヤブキ屋根の家のことで
古きよき時代の日本の里山の風景には欠かせないものです

ですから、盆栽の席飾りにおいて、たとえば実もの盆栽に茅舎石を配すれば
穏やかな山村の秋の景色がより鮮明に強調されますし

また長寿梅などにあしらえば、希望に満ちた早春を迎えた歓びの風景となります
草木と水石とが一体となって様々な場所と時を連想させてくれるのです

盆栽席飾りの中でも特に茅舎石が好まれるのは
このように、日本的な情緒のある景色を表現するのにピッタリだからですね



加茂川・茅舎石   間口4.8×奥行4.3×高さ5.0cm

茅舎石は真新しい立派な家を思わせては面白くありませんね(笑)
古びて屋根の茅がやや崩れかかったいたり、柱などもやや傾きかけた感じのほうが興趣があります

この茅舎石は、傾きかけた家の奥から透けのぞく光が侘しさを募らせますね
石の時代感もたいせつなことです、ともかく郷愁の趣を大切にしたいものです



戸障子が破れた感じが寂しげな風情を強調していますね

このように石に穴が開いて向こうへ抜けているのを、水石用語でヌケと呼びが
石の景色に変化を与え重要な役目をしていることが多いですね

さらに、この茅舎石のようにヌケが天然であれば理想的ですが
そんなことはめったにないものなので、目立たぬような少々の加工であればガマンすべきでしょうね



きっちりとした三角形の屋根では面白くない
左右非対称の美が私たち盆栽人が好む感覚です

そして最後に、今までなんどもお話しているように
”石を眺めながらも、じつは見ようとしているのは石でない”
をわすれないように

2008年9月3日水曜日

添配・曙山

盆栽界における唐金(青銅)の添配ものの作者として
英正と並び賞されるのが「曙山」

一説には英正の師であったとか弟子であったとかいわれますが
詳しいことは定かではありません

ただ盆栽や水石の世界との接触はかなり緊密であったようで
20年も前のことですが、私自身が手に入れた水石の台座が曙山作の青銅製でした

水石の台座は木製であるのが普通ですが
自らの愛玩用にか、それとも依頼されての注文制作であったか

あまりの珍しさに非常に感嘆したことをおぼえています
それはとりもなおさず、曙山の盆栽水石界との関わりあいの深さを表す事実です

ちなみに、盆栽界において、この曙山と英正の二人を最高峰の名人としますが
残された作品は曙山の方が圧倒的に少ないのです

作風は似通っていますが、添配を好む仲良しの同業者どうしで
曙山と英正とどちらが優れているかということが話題になり

やはり20年も前のこと、たまたま手持ちの似通った同じ題材を扱った両方の作品(そのときは童牛)で比べてみると
牛の顔や肢体の表現などにおいて、曙山の作品は、写実的な英正作品をより強調した力感があふれていました

これはお互いの優劣という問題ではなく、作風のわずかな違いととらえるべきであり
とにかく両者の写実力と表現力に改めて驚嘆したのでした

さて、今日ご紹介するのは曙山の「唐舟」です
見どころのポイントは二人の人物の動きの表現

ごゆっくりご覧下さい



曙山作・唐舟 間口5.0×奥行1.5×高さ2.1cm

古代中国に題材をとった作品、涌泉の作品にもよく描かれていますね
船中に座す高士と櫓を漕ぐ船頭両者の、体の動きの一瞬をとらえて絶妙です



私には、船中の高士が書見をしているように見え
そしてその右手は、今まさにページをめくらんとして一瞬宙に浮かされています

この小さな作品においても
人間の動作の瞬間を的確にとらえ表現しています



顔の傾き、両方の肩の位置、櫓を握るために伸ばされた両腕の角度など
櫓を漕ぐ船頭の肢体の動きも的確にとらえていますね



反対正面より

どこの角度から見ても絵になります



共箱が存在する英正ですが、不思議なことに曙山の場合共箱作品は存在しないのです
よってその真贋は、落款と作品のレベルで判断します

本作品はもちろんホンモノですよ!

唐舟の屋根の元(船頭の背中方向)に「曙山」の落款有りますね